40代になっても、コードも書けるし技術もまだ戦える。部下もできて、プロジェクトも任されている。年収は600〜800万円くらいで推移していて、「まあ、平均よりはもらっている方だろう」と思っている。
NISAもiDeCoも一応やっている。ボーナスの一部を投資に回しながら、「このペースなら老後も何とかなるだろう」と自分に言い聞かせている——もしあなたがそんな40代ITエンジニアなら、かなり高い確率でこのままでは金融資産5000万円には届きません。
しかも、多くの人が「3000万円くらいあれば何とかなる」と思い込んでいますが、インフレ・税金・社会保険・寿命を冷静に見れば、3000万円は“ギリ生きるだけのライン”でしかありません。「安心して生活できるライン」が見えてくるのは、むしろ5000万円近辺です。
なぜ「年収頭打ち」のままでは5000万円に届かないのか。
この記事では、40代ITエンジニアによくあるケースを前提に、届かない3つの理由をきれいごと抜きで整理します。
理由1:そもそもの「入金力」が増えない
まず前提として押さえておきたいのは、資産形成のほとんどは「投資テクニック」ではなく、入金力×期間で決まるという事実です。どれだけインデックス投資を勉強しても、月に投資できるお金が増えなければ、グラフのカーブは大きく変わりません。
典型的な40代ITエンジニアの姿をひとりイメージしてみます。
年齢は42〜45歳。額面年収は700万円前後。配偶者と子どもが一人か二人。郊外のマンションか戸建てに住み、住宅ローンはあと20年前後残っている。会社では「優秀な中堅」として扱われ、若手の面倒も見ている。
こうした人は、あなたの周りにも、そしておそらくあなた自身の中にもいるはずです。
手取りは月45〜50万円ほど。そこから住宅ローン、教育費、生活費、各種保険や通信費、車の維持費などを払っていくと、毎月コンスタントに投資に回せるお金は、多くて3〜5万円程度です。ボーナスが出るタイミングだけ、プラスアルファで数十万をNISAに入れる。
ここで冷静に考えたいのは、
「この入金力のまま20年続けて、本当に5000万円に届くのか?」
という点です。
仮に今、金融資産が1000万円あったとします。
そこに年100万円(毎月約8万円)を20年間投資し、運用リターンを実質3%(インフレや為替・税金を踏まえた現実的なライン)と仮定すると、20年後の資産はざっくり4500万円前後になります。
数字だけ見ると「結構いけるじゃん」と思うかもしれません。しかし、このシナリオはかなり都合がいい前提を置いています。
- 毎年100万円を20年間、途切れず投資に回せている
- リストラや病気、大きな転職の失敗などが一切ない
- 子どもの進学や親の介護で大きな出費が発生しない
- 相場も20年間、それなりに報われる水準で推移する
現実には、どこかでこの前提が崩れます。
そして前提が崩れるたびに、**真っ先に削られるのは「投資に回すお金」**です。
年収レンジ自体が頭打ちになっている以上、
支出のどこかが増えた瞬間、入金力は簡単に落ちていきます。
5000万円に届かない一つ目の理由は、「投資商品が悪いから」ではなく、そもそもの入金力が低く、しかも増えていく設計になっていないことです。
理由2:インフレと税金が「数字だけの5000万」に変えてしまう
次に、よく見落とされるのがインフレと税金の影響です。
先ほどの例で、20年後に4500万円まで増えたとしましょう。数字だけ見れば、それなりの金額に見えます。ですが、ここにインフレを乗せて考える必要があります。
今後20年間、平均して年2%のインフレが続いたとします。
複利で考えると、20年後の物価は今の約1.5倍です。今1万円で買える商品・サービスを買うには、将来は1万5000円近く必要になるというイメージです。
同じように、20年後の4500万円を現在価値に引き直すと、体感としては今の3000万〜3500万円程度にまで目減りしている可能性が高い。
つまり、「将来の4500万」は、あなたが今頭の中でイメージしている“4500万の豊かさ”とはぜんぜん違うということです。
さらに、そこから引き出して生活費として使うときには、当然税金も絡みます。
運用益に対する税金、必要に応じて使うときの売却時の税金。年金受給が始まれば、その分の所得税・住民税もかかります。表面的な「総資産額」と、手元に残る「実際に使えるお金」の間には、想像以上のギャップが出てきます。
ここで「じゃあ、目標を3000万にしておけばいいじゃないか」と考えるのは危険です。
3000万という数字は、インフレと税金を加味すると、「生きることはできるが、何かあればすぐに詰むライン」に近いからです。
- 想定外の医療費
- 住宅の大規模修繕
- 子どもや孫への援助
- 介護や施設費
こうしたイベントがひとつ乗るだけで、3000万はあっという間に削られます。
だからこそ、「安心して暮らせる現実ライン」として5000万を見ておく必要がある。
しかし、年収頭打ちのまま、さきほどのような前提で運用しても、インフレと税金を踏まえれば、実質的にはそこまで届かない——これが二つ目の理由です。
理由3:「今の生活を維持する前提」で設計しているから
三つ目の理由は、もっと根本的な話です。
多くの40代エンジニアは、資産形成を考えるときに、「今の生活は変えない」ことを前提にしている。
家もそのまま、車もそのまま、保険もなんとなく継続、子どもの習い事もとりあえず続ける。そのうえで、「余ったお金で投資を頑張る」という発想になりがちです。
しかし、これは順番が逆です。
本来やるべき順番は、
- 60歳・65歳時点で、どれくらいの金融資産が必要か(ざっくりでもいいのでラインを決める)
- そのために、毎月/毎年いくら投資に回す必要があるかを計算する
- そこから逆算して、「残りで生活する」ように支出構造を組み替える
なのに、現実には、
- 今の生活コストを基準にして、
- 余ったお金を「投資に回す」か「貯金に回す」かだけを考える
という逆転したやり方になっている。
これでは、目標金額が5000万だろうが3000万だろうが、“たまたま届いたらラッキー”レベルから抜け出せません。
しかも40代になると、支出の「固定化」が進んでいるので、自力で構造を変えるのが難しくなります。
- 住宅ローンはもう組んでしまっている
- 子どもの学校・習い事は今さら減らしづらい
- 保険はよく分からないまま入りっぱなし
- 車も手放しにくい
だからこそ、本当はもっと早いタイミングで設計し直すべきだったのですが、現実には「何となくこのまま」ここまで来てしまった人がほとんどです。
厳しいことを言いますが、
「今の生活レベルを1ミリも変えたくない」
という前提を握りしめたまま、
「でも資産5000万は欲しい」と考えるのは、
ただのワガママです。
年収が劇的に伸びる見込みがないなら、
どこかで“生活の再設計”という痛みを受け入れなければいけない。
にもかかわらず、多くの人がそれを先送りし、
「投資で何とかならないか」「もっといい商品はないか」と、
手段レベルの話だけを追いかけてしまう。
この「設計から逃げている構造」こそが、
三つ目の大きな理由です。
まとめ:今の延長線上に「安全な5000万円」はない
ここまでの話を一度まとめます。
- 年収レンジが頭打ちのままでは、そもそもの入金力が増えない
- インフレと税金を踏まえると、将来の5000万は「今の5000万」ほどの価値を持たない
- にもかかわらず、「今の生活を維持する前提」で余ったお金だけを投資に回している
この3つがそろうと、
資産5000万円は「狙って取りに行く目標」ではなく、「たまたま運が良ければ届くかもしれない数字」に落ちてしまいます。
問題は、投資の知識が足りないことではありません。
「どれくらいの年収レンジを取りに行くのか」「どれだけ生活コストとリスクを削るのか」「毎月いくら投資に回すのか」という、お金の設計そのものが甘いことです。
資産5000万円は、一部の天才投資家や起業家だけのものではありません。
40代からでも、年収・支出・投資額の3つを現実的なラインで組み直し、それを10年、20年と続ければ、十分に狙えるレンジです。
逆に言えば、
設計を変えない限り、どれだけ「頑張って働いて投資もしているつもり」でも、到達確率は低いままです。
次のステップでは、
- 年収レンジをどう引き上げるか
- 支出とリスクをどう削って入金力を増やすか
- 5000万円から逆算して、どんな投資設計にすべきか
を、「3ステップ」の形で具体的に整理していきます。
この記事を読み終えた今、「正直、このままではまずいな」と少しでも感じたなら、それがまだ間に合うサインです。
あとは、現実から目をそらさずに、設計を変える側に回るかどうかだけです。


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